ハーディング・インタビュー(前半)

Harding, 4, Credit Deutsche Grammophon Harald Hoffmann, high, frei

インタビュー:ハーディング、MCOを語る(前半)
「MCOとの関係は、私の音楽人生において最も重要なものです」

マーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)と言えば、切っても切れないのがダニエル・ハーディングの名前でしょう。ハーディングは、1997年から2011年まで、15年間にわたってMCOの首席指揮者を務めました。昨年、ルツェルン音楽祭での《魔笛》(コンサート形式上演)を最後に、そのポストを退任しましたが、以下のインタビューでは、MCOとの年月を振り返っています。なぜMCOの首席指揮者を退任したかの理由を、虚心に語った興味深い内容です(インタビューは、2012年の後半に行なわれたものです)。

――MCOとの関係はどのように始まったのですか。
「私は最初、首席客演指揮者でした。そしてそれは、明らかにお見合い結婚でした。クラウディオ・アバドが、我々を引き合わせたのです。しかし、もし我々の関係がうまく行かなかったら、決してここまでやってこれなかったでしょう。これは私にとっては、嵐のように情熱的で、生産的な――15年にもわたる――ラブ・アフェアでした。最初、我々は皆闘っていました。自分が誰で、どんな音楽家なのかを見つけ出そうと、必死だったのです。皆、そういう年齢でした……。しかし最後の方になって――というよりもごく最近――気付いてみたらお互いの関係が安定していました。人間として理解が深まり、成熟したのです。まさにその時に、我々は首席指揮者の契約を延長しない決断を下したのでした。
去年の夏、ルツェルン音楽祭で《魔笛》を演奏した後、さよならを言うのは奇妙な感覚でした。もちろん我々の関係は終りではありません。今年も再会しますし、これだけ長い関係だと、1年会わないだけで関係が変わる、ということはありません。友達なのですから。2013年の夏には、再びルツェルンで一緒に演奏します。シューマンとシューベルトの合唱曲ですが、1年のブランクは、お互いの関係に良く作用するでしょう」

――今、MCOとの関係が成熟した、と仰いましたが、なぜ今、首席指揮者を辞めようと思ったのですか。
「人は20歳から30歳の間には、たくさんの過ちをするものです。それが新しい道を歩もうと思った理由です。私はMCOを指揮しても、スウェーデン放送響を指揮しても、基本的には同じ人間です。しかし、昔の自分から別の人間になるということはできません。オーケストラに知り合った時の自分、昔の自分から離れられない。MCOとの場合は、当時の私とオケは、自分自身と闘っている若い人間だった。その苦しみを、15年一緒に、とことんやってきました。ですから今は、私にとっても団員にとっても、一度その“若かった自分”に区切りをつけて、大人として、成熟した人間として新たな関係を築き上げた方がいいのです」

――でもあなたは、MCOなしには現在のように成長することはできなかったのではないですか。団員も同じだと思います。
「それはまさにその通りです。MCOとの関係は、私の音楽人生において最も重要なものです。他の誰よりも、私という音楽家を作り上げたのが、MCOなのです。若い指揮者にとっては、大変なチャンスでした。今私は36歳ですが、MCOと基本的なレパートリーを何十回となく演奏しました。それによって、私は自分自身の作品観を深めることができたのです。
私の音楽的理想像を実現するために、MCOは常に100パーセントを出し切ってくれました。実は、昔一緒に録音した《ドン・ジョヴァンニ》のCDを聴きかえしてみたのです。部分的には、私は“これは廃盤にしてしまいたい”と思いました。というのは、今だったらこうは振らない、という個所がたくさんあるからです。しかし一方では、あの時の“何事も恐れない信念”を今でも持てたら、と感じずにはいられません。ここで聴かれるのは、当時の我々のゆるぎない信念であり、ヴィジョンなのです。それは今の私の感覚では“間違っていた”かもしれない(そのような言葉を使いたくないですが)。しかし当時の私とMCOが、これほどまでに全身全霊をかけてひとつの音楽的理想を追い求めていたことは、私の誇りとなっています。メンバーは、私のためにならば世界の果てまで行ったことでしょう。そして“間違い”は、私自身の間違い、私のスコアの解釈の間違いだったのです。我々は他の人と違ったことをしたいからしたのでも、誰かをコピーしたのでもありません。それは私にとってもMCOにとっても、一番嫌な演奏の仕方でしょう。当時の我々の演奏姿勢は、ものすごく純粋なものでした。スコアのなかにあると信じたものを実現しようとする、ピュアで正直な願いから生まれた解釈だったのです(後半に続く)」

ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ日本公演
6月15日(土)15時
軽井沢公演
軽井沢大賀ホール
曲目:ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」(独奏:クリスティアン・テツラフ)
ドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界》」
問い合わせ:軽井沢大賀ホール 電話0267-42-0055
http://www.ohgahall.or.jp/concert/details.php?cid=1259&year=2013&mon=5&v=2

6月14日(日)14時
名古屋公演(名古屋国際音楽祭)
愛知県芸術劇場コンサートホール
曲目:シューマン「交響曲第3番《ライン》」
ドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界》」
問い合わせ:CBC事業部 電話052-241-8118
http://hicbc.com/event/nimf/about/36th/20130616/main.htm

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