ハーディング・インタビュー(後半)

Harding, 3i

インタビュー:ハーディング、MCOを語る(後半)
「MCOとの関係は、私の音楽人生において最も重要なものです」

ダニエル・ハーディングは、1997年から2011年まで、15年間にわたってMCOの首席指揮者を務めました。2011年、ルツェルン音楽祭での《魔笛》(演奏会形式上演)を最後に、そのポストを退任しましたが、以下のインタビューでは、MCOとの年月を振り返っています。前号も含めて、ハーディングの「若者時代の別れ」とも読めるメランコリックな調子が、強い印象を与えます(インタビューは、2012年のルツェルン音楽祭の前に行なわれたものです)。

――MCOの何があなたにとって特別だったのでしょう。
「MCOの音楽に身を捧げる全力投球の姿勢は、本当に素晴らしいものでした。もし私が、頼むことの50パーセントしかやってくれないオーケストラと一緒に育ったら、自分のアイディアの限界がどこにあるか、決して理解することができなかったでしょう。MCOのメンバーたちは、私の考えのすべてに、全力でついてきてくれました。そのことによって私は、あらゆることを試すことができ、何が良いアイディアで何が悪いアイディアであるかを、身をもって知ることができたのです。もし別のオーケストラだったら、そうした経験をすることさえできなかったと思います」

――オーケストラとの関係はどのようなものでしたか。彼らはあなたのアイディアと常に同意していたのでしょうか。
「正直なところ、私は専制君主だったのです(苦笑)。私は言うこともやることも本当にものすごく早くて、リハーサルでは皆が反論する時間もなかったという感じです。もちろん今だったら、もうああはやらない、というアイディアはたくさんあります。しかし重要だったのは、MCOが私がやりたいことを、一緒にむしゃらなまでに追求してくれたことなのです」

――当時を振り返って、あれはなかったことにしたい、と思うような失敗はありますか。
「いいえ。大体、あの失敗はゼロにしたい、と考えることは正しくないと思います。最終的には、そうした失敗が我々を豊かにし、成熟させるのですから。我々は、共に成長し音楽の世界で名を成し、しかも今でも一緒に仕事しているのですから、そこまでひどかったということはないです(笑)。
私は、ルツェルンでの《魔笛》と、日本で演奏したブラームスとマーラーの録音を聴いてみました。そして、自分とMCOが本当に立派なものを作り上げられるようになったと思ったのです。たった2年前の演奏と比較しても、ぐんと良くなっていると思います。本来一番良いのは、少し前の自分の演奏を聴いて“恥ずかしい”と思えることです。というのは、それは自分がその期間に成長した、ということの証拠だからです。もし5年前の演奏の方が、今よりも良かったとしたら、それは最悪の事態でしょう。しかしここ1、2年の演奏は、本当に良くなったと思います。大人になったのです。最初の数年は、あらゆる意味で極端でした。早いテンポだったら本当に暴走で、特定の音色・効果を盛り込んだら、それが文字通り突出し、枠からはみ出していました。しかし今では、より精妙になったと思います。バランスや微妙な色合いのなかに、より力強いメッセージを織り込むことが可能だと、理解したのです」

――それでもあなたとMCOは、集中した雰囲気を維持しています。《魔笛》のリハーサルでは、その緊張感のある雰囲気が強い印象を残しました。
「そうするのが良い仕事をする条件ですね。もちろん我々は、物事を真剣に捉えようとしています。リハーサルは遊びでもバカンスでもなく、ある特定の作品に真剣に取り組む意味があるわけですから。我々がそうしたことをさせてもらえるのは、特権だと言えます。私は、和やかで楽しい雰囲気を維持しながら、ピリッと集中力のある状態にできるように、昔も今も努めるようにしています。私はシリアスなので、どうしても厳しいリハーサルになりがちで、それが悪いところなのですが……。

――今回、桂冠指揮者としてルツェルンではシューベルトとシューマンのプログラムを演奏しますね。
「シューマンの《夜の歌》、シューベルトの《水上での精霊の歌》、ミサ曲変ホ長調を演奏できることは、本当に贅沢だと思います。バイエルン放送合唱団、スウェーデン放送合唱団という世界最高の放送合唱団を使えることも。今回、15年の共同作業の後、最初の演奏会になりますが、ここではピアニッシモで、静かに弾いて、歌手に伴奏をつけることが課題なのです。オーケストラだけの作品はひとつもありません。何てクレイジーな再会でしょう!」

ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ日本公演
6月15日(土)15時
軽井沢公演
軽井沢大賀ホール
曲目:ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」(独奏:クリスティアン・テツラフ)
ドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界》」
問い合わせ:軽井沢大賀ホール 電話0267-42-0055
http://www.ohgahall.or.jp/concert/details.php?cid=1259&year=2013&mon=5&v=2

6月14日(日)14時
名古屋公演(名古屋国際音楽祭)
愛知県芸術劇場コンサートホール
曲目:シューマン「交響曲第3番《ライン》」
ドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界》」
問い合わせ:CBC事業部 電話052-241-8118
http://hicbc.com/event/nimf/about/36th/20130616/main.htm

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